李在明政権が掲げる「AI三大強国」構想に対し、実行計画の不在を懸念する声が上がっている。政府は関連産業育成に100兆ウォンを投入し、AIをベースとするデータセンターの建設や人材育成、インフラ整備などを推進する方針だ。しかし、多くの専門家が「過去の大型国策事業と同様、予算だけが浪費される”実効性なき宣言”にとどめてはならない」との警鐘を鳴らしている。
(ソウル=李民晧)
AI育成は経済安保に直結
政府は「AIハイウェイ」など超高速デジタルインフラの構築、蔚山におけるAIデータセンターの開設、クラウド・半導体・人材の三本柱による戦略を青写真として示した。しかし「何を、なぜ、どう進めるのか」といった点に対する具体的なプランが見られないことを懸念する声もある。
100兆ウォンという投資だけでAI強国となるわけではない。提示されたのはインフラ整備の枠組みに過ぎず、産業全体に与える波及効果や詳細なアクションプランは不明確だ。
AI育成は単なる技術開発やインフラ投資ではなく、デジタルインフラの主権を確立し経済安全保障に直結する国家戦略産業である。したがって、精緻な戦略と設計が不可欠だ。
過去、ノープランで着手した「グリーン成長」や「四大河川整備事業」が頓挫したが、予算だけが膨れ上がり実効性に乏しかった前例を繰り返してはならない。
韓国が最も強みを持つ分野は明らかだ。製造業、医療、半導体といった既存の競争力を備えた産業とAIの融合を図る「現場発の戦略」が求められる。これを怠れば、グローバルAI企業との競争で敗北を喫することになる。
米中対立の間で「板挟み」に
AIは単なる技術争いにとどまらず、地政学的な覇権争いの舞台となっている。米国は「チャットGPT」といった生成型AIの輸出統制を通じて市場支配を図り、中国は国家主導で独自の生成型AIモデル市場の独占を狙っている。
その狭間で、韓国は中国寄りとみなされ米国の警戒を招く一方、米国側に立てば中国との関係が悪化するという「板挟み」状態に陥りかねない。方向性の定まらないまま「AI強国」を叫べば、最終的には孤立するリスクが生じる。
政府は現在、「KAIイニシアチブ」委員会を立ち上げ、約350人の専門家と共に戦略立案を進めている。いま必要なのはスローガンではない。波及力や実効性のあるロードマップ、韓国型AIモデルの国際競争力に対するプランを含め、「なぜそれをやるのか」を明示した設計図の策定こそが急務だ。
計画中のAIデータセンター内部、サーバー室の鳥瞰図
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