在日コリアン作家の美術作品を収集し、ほぼすべてを韓国と日本の美術館に寄贈している在日韓国人2世の河正雄氏の自伝的評伝。
河氏のコレクションによってそれまで注目されず、評価も定まらなかった在日コリアン作家の作品が注目されるようになった。
画家を志していたが、「絵では食べていけない」との母親の反対で、工業高校卒業後は会社勤めなどを経て、家電販売店経営を成功させる。生活に余裕が出てきたころに、展示会で偶然見かけた全和凰の絵画『弥勒菩薩』を購入。全氏を直接訪ねたのを機に同氏の作品を収集し、他の在日作家の作品にまで及んだ。
そうしているうちに、集めているだけでは不十分であることに気づく。「作品や作家の存在を積極的に知らせていかなくてはならない」と美術館開設を構想する。
1992年に新設された光州市立美術館から要請を受け、作品を寄贈。2017年には「光州市立美術館分館 河正雄美術館」が開館した。これまでに韓日両国の美術館・博物館などに合計1万4000点以上を寄贈している。
河氏は同書で「次の世代のために遺産を守れたことが私の誇りであり、喜びです」と記している。
クオン刊
定価=4180円(税込)
|