その根底には両国の相互不信があるとの分析も出ている。このままでは韓国企業は、米国向け輸出品に対し15%ではなく25%の「関税爆弾」を課され、莫大な被害が懸念される。
李大統領、受け入れ不可の姿勢
交渉が膠着状態に陥った理由は、米国がかつて日本に適用した投資モデルを韓国にもそのまま要求しているためだ。
(1)直接的な現金出資(2)投資収益の90%を米国側に帰属(3)米国の投資先指定権限などが核心とされる。事実上、投資資金の運用と収益を米国が管理する内容であり、韓国政府は受け入れられないとの立場を固めている。
李在明大統領は最近、ロイター通信やタイム誌とのインタビューで、「米国が要求する方法で3500億ドルをすべて現金で投資すれば、韓国は1997年の金融危機のような状況に直面するだろう」「(米国の要求に)私が同意すれば弾劾されるだろう」と述べ、米国の要求を受け入れられないとの姿勢を鮮明にした。
不信を増幅させる透明性の欠如
こうした対立の中、ラトニック米商務長官は11日、「(韓国は)協定を受け入れるか、(25%の)関税を支払うかだ」と圧力をかけた。この発言が伝わると、大統領室は「合理性と公正性を欠いた交渉はしない」と即座に反論した。
さらに大きな問題は、不透明な交渉過程が国民の不信と不安を増幅させている点だ。韓米首脳会談直後の「合意文書が不要なほど、話がうまくいった会談だった」(姜由楨大統領室報道官)という初期の発表と、現在の対立状況は真っ向から食い違う。結果だけが発表され、交渉内容は非公開のままであり「暗闇の中」という批判が続いている。
これに対し、野党「国民の力」の張東赫代表は、「李大統領はタイム誌とのインタビューで合意文に署名していたら弾劾されただろうと発言した。これは関税交渉が失敗だったことを認めたものだ」と厳しく批判。国民の力は国民を欺いたとして、大統領室の担当者と関連責任者の更迭を要求した。
結局、合意文書のない「成功した交渉」とされたものの代償は、韓国企業と経済が支払うことになる。関税引き下げが実現しなければ、自動車や鉄鋼など主要な輸出企業は25%の高率関税を課され、価格競争力に深刻な打撃を受けるだろう。