米トランプ政権の関税政策に各国が苦慮している中、韓国では造船業が今後の交渉で有効なカードとなるという見方がされている。米国側が製造業復活の起爆剤にしたいという思惑とともに、対中国を見据えた安全保障面の強化のため、同盟国である韓国と日本へ支援を求めていることから、韓日の造船業活性化への期待が高まっている。
議会の法案を提出
米連邦議会に先月30日、米国造船業の競争力を強化するための法案が超党派で提出された。韓国、日本を含む同盟国と協力して船舶を建造し、海上輸送能力を高めることを目的としている。とくに世界最高水準の造船関連技術と生産能力を持つ韓国が恩恵を受けるものとみられる。
同法案では、米国が建造する国際商船を現在の80隻から今後10年以内に250隻に増やす目標を掲げている。一方、中国の国際商船は現時点で5500隻と圧倒的な差をつけている。
米国の造船業は第2次世界大戦時の1944年にピークを迎え、140万人が従事した。戦後、高度成長期の日本の造船業が急伸するとともに、米造船業は凋落。コスト競争に敗れただけでなく、鉄鋼業の衰退も要因となった。
2000年代以降の造船業は韓国、中国へと順次シフトした。その間、米造船業界は低迷を続け、現在の米国の建造能力は中国の200分の1以下とされる。
安全保障の強化も
造船業は海軍力にも直結している。米海軍は中国に対抗するため艦艇の数を増やす計画だが、現状では思うように建造が進まない。韓国と日本への造船業支援要請は、安全保障への対応と米製造業復活が狙いとなっている。
トランプ大統領は昨年の当選直後から造船業について、韓国と日本に期待する発言をしている。
米で進む大型投資
韓国の造船各社は米国内の造船所への投資を進めている。最大手のHD現代重工業は先月、米最大手の防衛産業造船会社ハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII)と生産性の向上や造船技術の分野で連携すると発表した。HD現代は提携によって米軍艦市場への参入と最新の建造技術の獲得を狙う。
韓国造船業2位のハンファオーシャンも昨年米大手フィリー造船所を買収し、米国内で軍艦を修理・保全する体制を構築した。
法案には米国の液化天然ガス(LNG)の輸出量の一定割合を米国籍の船舶で輸送することを義務付ける内容も含まれている。LNG運搬船は高付加価値船舶。韓国のLNG運搬船は米国の2分の1~4分の1のコストで建造でき、韓国造船業が受注を拡大できる機会として期待されている。
海軍省長官が訪韓
米海軍省のジョン・フェラン長官は先月30日に訪韓し、HD現代とハンファオーシャンを訪問。「米海軍と韓国海洋産業の関係は両国の同盟関係を一層強化するだろう」とコメントした。
日本では三菱重工業、川崎重工業、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)などが、米国との共同生産や投資に対応できると見込まれている。
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