新韓金融持株会社(晋玉童会長)は、巧妙化するボイスフィッシング犯罪に対応するため、国内の金融持株会社としては初となる子会社間のリアルタイム「共同防御システム」を本格稼働させた。グループの中核を担う銀行・カード・証券・保険の4社が、不審な取引情報を即座に共有し、いずれかで異常が検知されればグループ全体が一斉に対応して顧客の被害を未然に防ぐ仕組みだ。
金融委員会は17日、新韓金融4社による情報共有モデルを「革新金融サービス」に指定。金融界のボイスフィッシング対策の新たなスタンダードを示す先駆け的な事例と位置づけられている。
従来、金融各社は異常金融取引探知システム(FDS)で詐欺口座を発見できても、法的制約により系列会社間でのリアルタイムな情報共有には至っていなかった。犯罪グループはその隙を突いていた。
典型的なのが「同時多発型」の手口である。被害者の銀行アプリで融資を実行した直後に資金を証券口座へ移し替え、さらにカード会社で現金化を行うというものだ。顧客が同一人物とわかっていても情報が遮断され、対応のゴールデンタイムを逃すケースが後を絶たなかった。
今回の革新金融サービス指定で、こうした構造的欠陥は解消された。新韓金融はここ数年、FDSの高度化やAI基盤の異常取引探知システムをいち早く進め、業界のセキュリティー強化をリードしてきた。
今回の情報共有体制は、そこからさらに一歩踏み込み、グループ全体を網羅する「蜘蛛の巣状の防御網」を形成した点で意義深い。このモデルは、政府が進める社会横断型「ボイスフィッシングAIプラットフォーム」との連携も視野に入れており、今後の先導モデルとして期待が寄せられている。
(ソウル=李民晧)
政府の対策を発表する「ボイスフィッシング犯罪対応汎政府TF」=8月28日、ソウル政府総合庁舎