李薫の「家族の肖像」 第11回

四天王寺ワッソの総監督、父:李勝載 (2)
日付: 2025年07月29日 02時56分

父の李勝載(左)、幼い頃の父と祖父(右)

父が日本籍を捨てて韓籍を選んだ理由

 

父が韓国籍を取得する際、本国の裁判所で聞かれたこと。

「なぜあなたは日本籍を捨てて韓国籍を取得したいのか」

今でもそうだと思うが、日本籍を捨て、韓国籍を取得したいという人はかなり珍しい。この点に関してかなりしつこく質問されたと言っていた。

日本国籍が放棄され、続いて私たち子供の日本国籍も抹消された。そして韓国籍が取得されるまで、私たち家族はその存在がふっとかき消され、そして今度は太極旗を纏って空から舞い降り、再びこの世に存在が許された。

日本から海を越えて韓国に渡ったんだと思った瞬間、ああ、僕は韓国人になるんだなあーーと飛行機の中で涙が流れたと父が語ったことがある。

 

トンヘ ムルガ「東海の水とー」 

 

久しぶりに父が家に戻ってきた。長かった父の不在の時間を一気に埋めようと、子犬のように私たちは父の腕にぶら下がったり、クビにまとわりついたり大はしゃぎだった。

それがある程度落ち着いてきた時、おもむろに父が歌い出した。

「愛国歌」だった。ひと通り歌ってから、わたしたちにも歌うようにと促した。

「トンヘームルガ、はい!」

「トンヘームルガ」

トンヘームルガ。トンヘームルガ。全く意味がわからないまま、父の喜ぶ顔が見たくて、私たち子供三人は父の後に続き、競うように声を張り上げて歌った。

トンヘームルガ。トンヘームルガ。


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