174番歌を解読してみよう。
外尒 見之 檀乃岡 毛
君 座者常都 御門
跡侍宿 爲鴨
斧折(檀木)の丘の向こうに現れましたね。
君が動かれて門を出られるね。
皇子を追って仕え護ってあげよう。
草壁皇子が住んでいた嶋宮には斧折(檀木)の林があった。今の嶋宮にはどんな木が茂っているのだろうか。原文に「跡侍宿」というくだりがある。当時の舎人たちの任務が記されている。後に追い(跡)、仕えて(侍)、護る(宿)仕事だ。
次に175番歌を見る。
夢尒
谷 不見在之
物乎 鬱悒
宮出 毛爲 鹿 佐
日 之 隈廻 乎
これは夢なのか。
谷間に鹿が見えない。
人々が憂鬱で憂えている。
宮の外に出られる鹿を補佐する。
御日様になった皇子が湾曲部を回っていらっしゃる。
草壁皇子を鹿に隠喩している。湾曲部はあの世への海の湾曲だ。日本人の祖先たちは、あの世へ行くとき、鳥になって飛んで行くか、荒い海を船に乗って渡って行った。
176番歌を見てみよう。
天地 与 共 將 終 登 念 乍
奉仕之
情 爲 奴
天と地が同時に終わったと思う。
敬いお仕えしなければ。
情人のために奴婢にならなければ。
草壁皇子の死は舎人たちにとって天地が崩れるも同然だった。それでも最後まで奴婢になって仕えるという。皇子と舎人たちの関係が分かる。「情人」と表現している。一般的な関係ではなかった。
舎人たちの歌(万葉集171~193番歌)
<続く>