対ドル相場でウォン安が急激に進んでいる。16日には一時、1ドル=1400ウォンを超えた。韓日米はこれを受け17日、韓日米財務相会合を開き「急速なウォン安および円安に関する韓日の深刻な懸念」を共有、共同声明を出した。さらに同日、韓国銀行の李昌縺総裁は市場介入に言及した。
イスラエルとイラン間の紛争が激化、中東情勢が緊迫化した16日、ウォン・ドル為替レートが1400ウォンを超えた。
変動相場制を導入した1990年から現在まで1ドル=1400ウォン台に達したのはわずか4回。1997年の外国為替危機、2008年のグローバル金融危機、22年の米国の急激な金利引き上げ以来だ。米国の高金利政策が当面継続するとみられるなか、中東地域の地政学的不安定化がもたらすリスク回避現象が重なり、ドルを買ってウォンを売る流れが強まったとみられる。
同日、KOSPIは外国人投資家が一斉に韓国株を売却、2724億ウォン分を売り、2・28マイナスの2609・63で取引を終えた。日経株価指数(マイナス1・94%)と香港ハンセン指数(マイナス2・12%)などアジア株式市場も軒並み下落した。
為替安は韓国だけの問題ではなく、世界的な現象で、米ドルの独歩高とも言える。日本でも1ドル=154円台で取引されるなど約34年ぶりの円安を記録した。問題はそういったなかでも、ウォン安が特に顕著になっていることだ。16日、ウォン・円の交換レートは100円当たり902・34ウォンで、前日比2・62ウォン下落した。中国人民元に対しても同様の動きがみられた。
12日基準で、主要31カ国通貨の対ドル価値の変化を意味する「スポット収益率」を比較したときに、ウォンの価値は先月29日比2・04%下落した。ロシア・ルーブルやイスラエル・シェケルよりも大きく下げて31カ国のうち下落幅が最も大きかった。
日本は低金利政策を維持してきたことから円安状態が長期間にわたり続いている。日銀はマイナス金利解除に踏み切ったが、世界的な金利水準にはほど遠い。韓国は米国に追従し利上げを行っており、円と比べ通貨価値を維持してきた。一方で韓国経済は対外依存度が高いことから、中東リスクのような外部変数の影響を大きく受ける。小規模開放経済国家の特性上、資本が自由に出入りして外為市場の変動性も大きい。
時期的にも今後ウォン安が加速する要因がそろっている。毎年4月は企業の年間配当金支給額の60~70%が集中する。国内の株式市場で配当金が支給される4月以降、外国人投資家がウォンで受けとった配当金をドルに変えるからだ。
こういったなか韓日米は17日、初の財務相会合を米首都ワシントンで開催した。財務相会合には米国からイエレン財務長官、韓国から崔相穆・経済副首相兼企画財政相、日本から鈴木俊一財務大臣が出席した。
会合後、共同声明を発表。
外国為替市場で円とウォンが対ドルで急落していることについて「我々は日韓の深刻な懸念を認識しつつ、外為市場の動向に関して引き続き緊密に協議する」と明記。対中国を念頭に3カ国が経済協力を深める中、通貨安に苦しむ韓日に米国が一定の理解を示す格好となった。通貨安に関する懸念を韓日米で共有するとの趣旨を盛り込んだ共同声明は史上初めてで、異例の発表となった。
韓日両国では過度な通貨安で輸入品関連の物価が上がり、国民生活に打撃を与える懸念が浮上。為替は市場に委ねて政府は介入しないのが原則だが、中国を念頭に3カ国の経済連携を深める必要が増す中、米国が共同声明の形で韓日に配慮した可能性がある。
円安・ウォン安に関する懸念を韓日米で共有するとの趣旨を盛り込んだ共同声明は史上初めて。
共同声明は「自国経済と世界経済にとっての3カ国間関係の重要性を確認する」と強調。「非市場的慣行による我々の経済への損害に打ち勝つための重要性を強調する。サプライチェーン(供給網)の強化に向け、共に取り組む」として、半導体などの重要物資の調達で韓日米が連携を深める考えを改めて示した。
共同声明後、22日までの間でウォンは1400ラインを超えることはなく、ウォン安に歯止めがかかったが、一時的なものとの見方が強い。中東情勢が安定に向かわない限り、原油高の影響を受けウォン安傾向が続くとみる関係者は多い。